全熱交換器は換気システムに導入される機器の一部です。
「言葉自体は聞いたことがあるけれど、具体的な仕組みが分からない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、全熱交換器付き換気システムの仕組みを分かりやすく解説します。
メリットや注意点もご紹介しますので、採用を検討されている方はぜひ参考にしてみてくださいね。
<コラムのポイント>
- 全熱交換器付き換気システムは、給気・排気時に熱と湿気を交換できる点が特徴です。
- 換気時に熱交換が行われることで室内の温度変化が起こりにくく、快適性や省エネ性を高められるなどのメリットがあります。
- 全熱交換器の中にも様々な構造や性能、メンテナンス方法の違いがあるため、ご自身に合った機器選びをすることが大切です。
▷【相談無料】全熱交換器付き換気システムに関する質問・ご相談はこちら
Contents
全熱交換器とは
全熱交換器とは換気システムに導入される機器の一種です。
一般的な換気システムと熱交換型換気システムの違いをご紹介します。
【一般的な換気システム】
- 冷暖房されて適温になった空気を排気する
- 外気をそのまま給気する
外気をそのまま給気するため、冬場は室内がどんどん寒くなり、夏場は暑くなります。
【全熱交換型換気システム】
- 適温になった空気の熱を回収してから排気する
- 外気に熱を伝えてから給気する
排気・給気時に熱交換されれば、外気温のまま空気が取り込まれることがありません。
全熱交換器と一般的な換気システムは「熱交換するかどうか」という点が異なります。
次章で全熱交換器の詳しい仕組みを確認しましょう。
全熱交換器の仕組み
先ほどご紹介した通り、通常の換気に加えて「排気時に熱を回収・給気時に熱を伝える」ことが全熱交換型の特徴です。
具体的な仕組みを確認しましょう。
【排気の流れ】
- 室内をきれいな空気が循環する
- 換気によって汚れた空気が排気口を通って全熱交換器に運ばれる
- 空気に含まれる熱を回収して屋外へ排気する
【給気の流れ】
- 外気が給気口から入る
- フィルターで汚染物質を取り除いてから全熱交換器へ運ばれる
- 排気から出た熱を給気に移して室内へ取り込む
排気と給気の流れを別々にお伝えしましたが、実際には同時並行で行われて常に熱移動が起きています。
ダクトによって空気を移動させる換気システムが多いですが、中にはダクトレスで換気できる仕様もあるなど、メーカーによって構造は様々です。
「ハグデザイン」では、ハイグレードの全熱交換器付きの換気システムを扱っております。
導入を検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
▷【相談無料】全熱交換器付き換気システムに関する質問・ご相談はこちら
全熱交換器の換気システムを採用するメリット
全熱交換器の換気システムを採用するメリットをご紹介します。
換気しても室内の温度が変化しにくい
全熱交換器は、換気しても室内の温度が変化しにくい点がメリットです。
夏場は冷たい熱、冬場は暖かい熱を含んだ空気が給気されるため、室内温度の変化を軽減できます。
高断熱高気密住宅に全熱交換器の換気システムを導入することで、より外気の影響を受けにくい住まいをつくることが可能です。
▷関連コラム:「ヒートショック」は冬も夏も注意が必要|事例や温度差の目安、住まいの対策をご紹介
冷暖房効率を高められて省エネ
全熱交換型換気システムなら、冷暖房効率を高められて省エネです。
- 一般的な換気システム:外気がそのまま入ってくるため冷暖房を常にフル稼働する必要がある
- 全熱交換型換気システム:熱を交換してから給気するためエコ運転でも快適な室温を保てる
例えば、冬場に0℃の空気が室内に入ってきたらどんどん寒くなるため、温めるためにエアコンを強運転にする必要がありますよね。
一方、20℃の室温から排気の熱を回収して18℃で給気できれば、室温の変化が少なくエアコンの使用も最小限で済みます。
冷暖房効率を高められると快適性が高まるのはもちろんのこと、高熱費の節約にもつながります。
室内の湿度を調整できる
全熱交換器は熱だけでなく湿度の交換もしてくれます。
熱交換の仕組みと同様に、室内の湿度に近い状態にしてから給気することが可能です。
適切な湿度を保てると乾燥による体調不良を防ぎやすくなり、多湿によるダニやカビの発生も抑制しやすくなります。
また、室内の水分量によって体感温度は変わるため、快適な住まいにするためには温度だけでなく湿度のコントロールも大切なポイントです。
建物全体の換気量が安定する
全熱交換器は、機械の力によって給気・排気する「第一種換気システム」なので、換気量を安定させることが可能です。
一般的な住宅では、第一種換気システムの他に「第三種換気システム」を採用するケースもありますが、次のような違いがあります。
- 第一種換気システム:給気・排気が機械管理なので計画的な換気ができる
- 第三種換気システム:自然給気・換気扇による排気なので換気量が不安定になるケースもある
第一種換気システムを選ぶことで効率的な換気が実現し、家中の空気をしっかりと入れ替えられます。
空気の滞留がないとニオイやハウスダストなどもこもりにくく、快適な室内環境を保つことが可能です。
外気中にある汚染物質の侵入を防ぎやすい
全熱交換型換気システムはフィルターを通して給気するため、外気中の汚染物質の侵入を防ぎやすいです。
具体的には次のような物質の侵入を防止できます。
- 花粉
- PM2.5
- 黄砂
- 砂ぼこり
- 虫
- カビ菌やウイルス
虫や砂ぼこりはもちろん、微細なウイルスなどを除去できるフィルターも少なくありません。
外気の汚染物質を取り除いてから給気できるため、アレルギーや喘息などの症状が軽減されるケースもあり、快適な空気環境を維持しやすくなります。
全熱交換器付きの換気システムを採用する際の注意点
全熱交換器付きの換気システムを採用する際の注意点をご紹介します。
①機械によって熱交換率やフィルターの性能に違いがある
全熱交換器はメーカーによって性能に違いがある点は注意が必要です。
熱交換率が低いと熱移動が少なくなるため、室内と給気の温度差が生じやすくなります。
また、フィルターによって花粉やPM2.5などの除去力に差が出ますので、導入する機種やフィルター性能を比較して選ぶことが大切です。
②定期的なメンテナンスが必要
全熱交換器付きの換気システムは定期的なメンテナンスが必要です。
具体的なお手入れ方法は、給気口や排気口の掃除ですが、給気フィルターには虫などが付いているケースもあるため負担に感じるとの意見もあります。
メンテナンスを怠ると換気の質に影響がでますので、しっかりお手入れできるか事前に内容をチェックすることが大切です。
日常のお手入れは、掃除機でゴミを吸い込むだけで完了するような負担が少ないものもありますので、ご自身に合うタイプを選んでくださいね。
③導入費用や修理・交換費用がかかりやすい
全熱交換器付き第一種換気システムは、第三種システムと比較して導入費用がかかりやすいです。
標準仕様が第三種システムの住宅会社の場合、数十万単位の追加費用になるケースもあるため、事前に確認して予算の確保をおすすめします。
また、全熱交換器の故障時は、第三種換気システムと比べて修理や交換のコストがかかるケースも少なくありません。
さらに全熱交換器の故障によって作動がストップすると、室内全体の換気ができなくなるリスクがあります。
窓による効率的な換気もできるようなパッシブデザイン設計を取り入れておくこともポイントです。
▷関連コラム:パッシブデザインとは?メリット・デメリットと建築事例、設計のポイントをご紹介
④設置場所によっては作動音が気になることがある
全熱交換器本体の設置場所によっては、作動音が気になることがあります。
本体機器は床下や天井裏、収納内などに設置されることが一般的です。
機械室が寝室やワークスペースなどと隣接していると、作動音が聞こえるケースもあるため設置場所は十分に検討しましょう。
また、全熱交換器によって静音性が異なるため、機器選びの際に比較することをおすすめします。
⑤高気密高断熱住宅にすることで効果が高まる
全熱交換器付き換気システムで室内の快適性を高めたいなら「高気密高断熱住宅」を建てましょう。
どんなに効率的に熱交換しても、建物自体から熱が出入りしてしまうと省エネ効果が薄れてしまいます。
また、建物の隙間から空気の出入りがあると、室内の空気環境の質にも影響するため注意が必要です。
建物の気密性・断熱性を高め、換気システムの性能を最大限に活かせる住まいを目指しましょう。
高気密高断熱住宅については、下記コラムをチェックしてみてくださいね。
・HEAT20のG2グレードとは?基準やG1・G3との違いを分かりやすく解説
・「GX志向型住宅」の基準を分かりやすく解説|最大160万円もらえる補助金の条件も
「ハグデザイン」では、全熱交換器付きの換気システムの施工実績が豊富であり、知識が豊富な一級建築士による換気提案を行っております。
導入を検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
▷【相談無料】全熱交換器付き換気システムに関する質問・ご相談はこちら
気圧調整・全熱交換器付きの第一種換気システムがおすすめ
全熱交換型第一種換気システムを採用するなら「気圧調整」機能付きがおすすめです。
気圧調整機能とは、給気・排気量を自動で調整して室内の空気圧を高くする機能のことを指します。
高気圧な状態を維持できると、次のようなメリットがあります。
- 部屋に満遍なく快適な空気を送りやすくなる
- 小さい隙間から流れてくる外気も遮断する効果がある
- 窓などの隙間から入る小さい虫を防ぎやすくなる
より換気の効率性や快適性を高めたい方にぴったりです。
また、上の図のように基礎内も換気できると床の温度が極端に下がりにくいため、冬場の快適性が高まります。
全熱交換器付き換気システムの中でも様々な種類があるため、違いを理解した上で最適な機種を選びましょう。
まとめ
全熱交換器付き換気システムは、換気時に熱や湿気を交換できるため省エネ性が高く、室内の快適性を高められます。
高気密高断熱住宅と組み合わせることで、より効果を実感しやすくなりますので、採用時は住宅性能にもこだわることがおすすめです。
住宅会社によって採用している全熱交換型換気システムの種類が異なるため、しっかりと違いを理解してご自身に合ったものを選びましょう。
全熱交換型第一種換気システムを検討しているなら「ハグデザイン」へご相談ください。
実際にシステムを導入した住まいをご案内しながら、仕組みや疑問点を分かりやすく解説いたします。