先日、群馬県にて「GX志向型住宅」に関する研修会を開催いたしました。今回は主に建築・住宅関連の専門家を対象とした内容で、70名を超える皆様にご参加いただき、大変有意義な時間となりました。
研修会では、GX志向型住宅の計算方法や使用する材料の詳細など、実務に直結する具体的な情報を中心に解説を行いました。参加者の皆様からは、「実務に役立つ内容だった」「最新の動向を把握できた」といった声も多く寄せられました。
また、2024年5月12日にエネルギー庁より発表された最新情報も併せてご紹介しました。GX志向型住宅の標準化が2023年に進められた経緯に加え、今後のポイントとして注目される蓄電池の導入など、今後の住宅設計や設備計画に欠かせない内容も取り上げました。
GX(グリーントランスフォーメーション)に関する制度や技術は日々進化しています。今後もこうした研修を通じて、地域全体の環境性能の底上げに貢献していければと考えております。
GX志向型住宅とZEH(ゼッチ)のこれから
地球温暖化対策として、日本は**2050年カーボンニュートラル(CN)**を目指しています。その実現に向けて、今後の住宅のあり方も大きく変わろうとしています。特に注目されているのが「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」と「GX志向型住宅」です。
1. 今後の住宅はZEHが基準に
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2030年までに、新築住宅のすべてがZEHレベルの省エネ性能を持つことが目標。
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ZEHの基準とは:
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断熱等級5以上(断熱性能が高い)
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一次エネルギー消費量を20%以上削減(BEI 0.80以下)
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さらに、住宅の省エネの中心となるZEHには、より高い省エネ性能が求められるようになります。
2. GX志向型住宅とは?
ZEHをさらに進化させた住宅で、以下のような特徴があります:
▶ 高い断熱性能と省エネ性能
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断熱等級6(現行より上位)
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BEI 0.65(一次エネルギー消費35%以上削減)
▶ 設備の設置がポイント
戸建て住宅において、次のような設備の導入が求められます:
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蓄電池(5kWh以上):再エネを貯めて使う仕組み。
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高度エネルギーマネジメント:家庭の電気使用量や発電量を管理し、効率的にエネルギーを使う。
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EV充電器など:設置が難しい場合を除き、推奨されます。
3. 地域特性にも配慮した設計へ
再エネ設置の義務については、地域によって柔軟に対応します:
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多雪地域:屋根へのパネル設置が難しい場合など、例外的対応あり。
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都市部の狭小地:敷地が狭くてパネルが載せにくい土地も、配慮対象。
集合住宅では、階数によって再エネ設備の設置要件が変わる予定です。
4. 新しいZEH定義(予定)
2027年度から「新ZEH基準」での認証がスタート予定です。これにより:
比較項目 | 現行ZEH | 新ZEH |
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断熱性能 | 等級5 | 等級6 |
エネルギー削減率 | 20% | 35% |
再エネ搭載率 | 100%(ZEH) | 最大115%(ZEH+) |
5. スケジュール概要
年度 | 内容 |
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~2027年 | 現行ZEH定義での認証が可能 |
2027年度~ | 新ZEH定義での認証開始。現行定義の新規認証は停止予定 |
以後 | 既に認証を受けた現行ZEHは継続使用可能 |
まとめ
GX志向型住宅や新ZEH定義は、ただの高性能住宅ではなく、地球環境を守るための社会インフラとして期待されています。設計者・建築主・住まい手すべてが新しい基準を理解し、協力していくことが重要です。